少年時代の想い出を重ねて

| コメント(0)

幼い頃のるさとの風景を重ねて絵を描いていると言ってみても、私が生まれ幼少年期を過ごしたのは、のどかで穏やかな「ふるさと」という言葉のイメージとはおおよそ対極の、林立する煙突の煙が雲を染め、油で真っ黒に濁った運河が海にたれ込む工業地の町だった。

眩しい新緑の木漏れ日も、川面をわたる爽やかな春風も知らなかったけれど、工場廃屋の錆びた機械も、積み上げられたコークスの山も、すべて大切な冒険ステージでありツールだった。

片隅に、小さな我が家のあった製材工場に出入りする、工員や大工の額には汗がひかり、もり上がった筋肉が逞しく強いものに見えた。
人々のなりわいの暮らしは、つつましいながらも人情にあふれ、商店や市場は活気にあふれていた。

結局、あのころ体いっぱいに感じ、蓄えたすべてのものが、今、画家となって映る北国の風景に懐かしく重なったとき、作品がうみ出されるような気がする。

コメントする